エンジェラー、と言って具体的にどのくらいの世代の層に通じるかは分からないけど、私が中学三年生の時にエンジェラーな男友達が二人いた。

どうやって友達になったかをはっきりと覚えている。
学生の頃から私は極度の引っ込み思案で、似たような性格を持つ人には共感して頂けると思うのだけれど、人前で目立つことをするのはめちゃくちゃ苦手な割に、ひとりで完結出来ることに関して常人ではやらないような突飛な行動に出ることが時々ある。

中学時代の私で言えば、それは髪型を急に変えたことで、三つ編みで癖をつけた髪の毛をほどいてウェーブにしてから通学するという、どう考えても校則違反な行為を突然やり始めたことがあった。
結局それは2回目くらいで突如自分のクラスだけ頭髪検査が入り、怒られ、すぐに止めることになったのだが、その髪型を見た男の子が「可愛い」って言ってたよ、と人伝に聞いていて、それがその男友達となる二人だった。

先ほどから「男友達」と語ってはいるけど、普通の人が考えるような、色んな場所に出掛けたりということは一切なく、休み時間に話したり、休日たまたま見掛けた時に大きな国道の向こう側から名前を呼んで手を振ってくれる、程度の関係だ。
ただのクラスメイトで済ます人間もいるかも知れないが、この二人は私を友達と呼んでくれたと思う。

頭髪検査事件の後、向こうから声を掛けられ話をするようになった。
どエンジェラーな二人はカスケーダーで、私はその当時SOPHIAにハマり散らかしており、友達はラルク、友達はマリスミゼル、また別の友達はイエモン、レッチリ、ミッシェルガンエレファントと、とにかく当時はまだまだバンドが元気な時代だった。音楽が好きで、それを通じてファッションを楽しむ文化が盛んな当時に、恐らくその髪型を見て同じ匂いを感じたのか、それからお互いの好きな音楽について、ちょこちょこ話をしていたと思う。

これまた引っ込み思案な性格の方には共感して頂けるかと思うが、友達になったきっかけが自分であろうと、その後会わせた友達の方が急速に仲良くなり、自分は置いてけぼり、ということも私自身何度か経験済みだった。
だけど、今考えればこの二人は私のそうした性質を恐らくよく分かっていて、どんなに私の仲の良い友達が音楽の話を出来ようと、私に声を掛けるようにしてくれていたと思う。
こうした思い出を振り返っている時、当時まだ15歳くらいだったはずの同級生の視野の広さや気遣いに感心させられることがある。まぁ、私に気を遣ってくれていたんだな。そういうシーンがいくつも思い出される。
ちなみにこの二人には当時彼女がいたので、別にそういう話では全くない。

中学の卒業式の日、私は恐らく学年で誰よりも先に校舎を後にしたのだが、最後の教室の中で、この内の一人が手紙をくれた。ラブレターじゃないよ、と念を押されながら。手紙と呼ぶにはお粗末な、メモ帳の切れ端をガーゼテープで留めたものだったけれど、女子とも男子とも普通にお喋り出来るような女の子曰く「自分にもくれと言ったけどくれなかった」らしいその手紙には、まずあなたは変人だというようなことが書かれていた。だけどすごくレアだと思うから、そのままで生きていって下さいと、そう書かれていた。日々僕も僕のままで生きていくので、と。

根拠のないと思っている自分に対する自信は、もしかしたらこういう出来事のひとつひとつから出来上がっているのかも知れないと、いま思い返してみて思う。

この手紙の内容は相当嬉しくてずっと取っておいたのだけど、家庭内でゴタゴタがあった時に荷物をすべて捨てられる事件があって、そこから取り出した記憶はあるけどその後私自身も三度引っ越しをしているので、もしかしたら紛失してしまったかも知れない。でもこうして時々思い出してみる、それで充分な気もする。

最後に説明すると”エンジェラー”っていうのは卓也エンジェルというブランドの服を着ている人たちのことを差す。検索してみると分かるがなかなか強烈な服だ。卒業後に一度だけ金山駅のプリクラ前で男友達の一人に偶然会ったことがあるが、女の子のエンジェラー集団の中にその友達一人、私に気付いて無邪気に手を振ってきた。なかなかの集団であった。それ以来、この二人には会っていない。どこかで元気にしていたらいいな、と思う。